『森をつくった校長』 山之内義一郎著 春秋社
協会の相談役、山之内義一郎(やまのうちぎいちろう)さんが、8月に著書を出版されます。先生の教育実践の一端は、既に『森と牧場のある学校』で紹介され、英語版にもなって海外に大きな反響を巻き起こしています。今回は山之内さん自身が、実践者の内側から、「学校の森」づくりや「総合的な学習」の足跡を綴った感動のドキュメントです。
なお、著者の了解を得た場合は、割引価格で販売が可能です。
(四六判上製/272頁/定価(1800円+税)<まえがき>
私は1953年に新潟県で小学校教師になり、その後、74年から92年まで、五つの学校で校長を務めた。校長として私は「総合活動」と自流で名づけた試みを始め、86年にはその発展として「学校の森」づくりを展開した。
「学校の森」は、すばらしい学びの場となった。子供たちばかりではなく、教師・親、地域住民をも巻き込む教育実践となった。そして本や雑誌・新聞で取り上げられて反響を呼ぶことになった。
学校に森をつくると言うと、自然環境回復の運動だと思う人も多い。現在「学校の森」を国民運動にまでしつつある韓国の人々も、当初そのように捉えていた。
しかし、「学校の森」づくりは単なる環境緑化ではない。それをテコにして学校教育全体を組み替えようとする、教育改革の試みなのだ。実際のところ、「学校の森」をつくったのは緑の少ない都市環境の小学校ばかりではなく、近くに豊かな山林や美しい川があるような環境の学校もあった。
なぜ「森」なのか。それは何を意図しているのか。 ― 本書は、私のこれまでの活動を辿りながら、なかなか答えることが難しいこの問いに回答を与えようとしたものである。もう一点、本書で述べようとしたのは、「総合学習」ということについてである。
「教育荒廃」が叫ばれ、「教育的国難」と言われるまでになった今日のわが国の学校教育を立て直すために、文部省は新たな「学習指導要領」を発表し、2002年(平成14年)4月から実施することになった。そこでは、「ゆとり」と「生きる力」の育成をめざした「特色ある教育」を推進しようとし、教科教育を超えた「総合的な学び」という、体験的な学習を重視した方向性が打ち出されている。ところが、「国際理解、情報、環境、福祉、健康などの横断的・総合的な課題」と示されているだけで教科書もモデルもない「総合的な学習」に、現場の教師たちは当惑している。
自己宣伝めいて恐縮だが、私が初めて小学校長になった1974年から試みてきた「総合活動」や「『学校の森』を中心にしたカリキュラムづくり」は、現在文部省が提唱している「教科を超えた総合的な学び」そのものだったと私は考えている。それは単なる教科横断的な学びを実施したのではなく、学校の教育目標や教育課程の再編成までを含む、二十一世紀の学校教育の方向性をめざした根本的な教育改革の試みだった。その一環を記すことで、教育実践の現場の人たちの参考になれば、とても幸いである。子供たちの健全な成長を心から願っている親を始め、教育に携わる人たち、そして地域づくりや環境問題に少しでも関心がある多くの人たちに、ぜひお読みいただきたいと願うものである。
<目次>
序章 森の不思議な力
・ 始業式のときめき
・ 森と語る子供たち
・ 森さんからの手紙
・批判と賛同
・ 南中学校の森
・佐川さんの「気づき」第一章 「総合活動」への苦闘
・ 敗戦の混乱の中で
・ 長いトンネル
・ 教える必要はあるのか?
・「作問」との出会い
・ 山村の校長となる
・ 昔話の学習
・ 「峠の気づき」
・村のいのちとつながり始める
・ 「総合活動」の始まり
・文部省の追認第二章 「学校の森」づくり
・ 更地に立って
・ やってきた"ひらめき"
・ 現実化の道のり
・「火」はついた
・ 宮脇理論との出会い
・ 森はいかにして作るか
・森を作る
・ 子供たちの自発的な活動
・ 地域とのつながりが生まれる
・カリキュラムづくりへ第三章 拡がっていく
「学校の森」
・
小千谷小学校へ
・ 自然と触れ合える環境づくり
・「自分のたがやし」プログラム
・ 穴沢先生の奇妙な体験
・ ホリスティック教育との出会い
・『森と牧場のある学校』
・ 拡がっていく「学校の森」
・ 韓国の国民運動
・聖籠町の新たな試み
・ 「学校の森」から「地域の森」「病院の森」へ
・にいがた「緑」の百年物語
・森の思想終章 新たな教育を求めて
・ 二つの子供観の対立
・ 対立の向こうに見えるもの
・「総合的な学習」
・ カリキュラムづくりこそカギ
・ 層構造と教科類型
・体験と表現の大切さ
・ 教師の自己変革を
・「学校の森」が新たな教育を拓く
参考文献
あとがき
資料